前回の記事では、マンションなど居住空間の間仕切り壁の構造と強度についてご紹介しました。
▼ 間仕切り壁についての詳しい記事はこちら
同じ間仕切り壁 でも、倉庫内に設置される壁については『倉庫業法』という法律に従って設計・施工する必要があります。
今回は倉庫内の壁に関する基準について詳しくご紹介します。
そもそも"倉庫"とは?
自家用倉庫と営業倉庫の2つに分類
倉庫は大きく「自家用倉庫」と「営業倉庫」の2つに分けることができます。
この2種類は「倉庫を使っている人」と「物の所有者」の関係に違いがあります。
自分の倉庫で自分の荷物を保管する場合は自家用倉庫、他人の荷物を預かる場合は営業倉庫となります。
営業倉庫は私たちの生活に欠かせない多種多様な物品を預かるという公共性の高い役割を担っていることから、国への登録と一定の基準を満たす倉庫を設けることが必要になります。
倉庫に求められる施設設備基準
壁の強度2,500N/㎡とは?
倉庫業を営むにあたって必要となる建物の基準は、倉庫業法の施設設備基準で定められています。
安心して荷物を預けられるよう、他の建物よりも基準が厳しく、防水性能や耐火性能、防犯措置などが規定されています。
壁の強度については、2,500N/㎡の荷重に耐えられる性能が必要とされています。
これは1㎡に250kgがかかるような荷重で、例えるならお相撲さん(元横綱曙関)が 一人、もしくはファミリー向け冷蔵庫が2台載っているような状況です。
倉庫の棚などが何らかのトラブルで倒れてしまい、壁に棚や荷物の重量がかかる状況を想定しています。
大きな荷重に耐えられる壁とするには、ALC(軽量気泡コンクリート)や強度の高い
鋼製下地材を使用して施工するのが一般的です。
壁の強度はどう証明する? 載荷試験の方法
鋼製下地材を倉庫の壁に使用する場合、これらの強度が2500N/㎡以上あることを証明しなければなりません。
壁の強度を証明する一つの方法として、鋼製下地材(スタッド)の強度試験があります。
▼ LGSについての詳しい記事はこちら
スタッドを使って壁の下地を構成し、その上に比重の大きい錘(高比重アスファルト系面材)を重ね合わせていきます。
均一に荷重をかけるため壁面を水平に設置した状態にし、一様に錘を載せていくのがポイントです。
2,500N/㎡まで錘を載せたのち、それらを取り除いて部材のたわみ量を計測します。
重大な損傷・変形や外れがないかなど性能を確認することで、2500 N/㎡の荷重に耐えられることが証明されます。
▼ 試験の 様子はこちらの動画でご覧いただけます
https://twitter.com/Kirii_kaihatsu/status/1297828088177283072?s=20
壁の強度が2,500N/㎡に満たない場合は、荷崩れのおそれのない措置として壁 から荷物への距離と積み荷の高さに制限が生じます。
荷物の置けないスペースが増え、倉庫を効率的に使えないというデメリットにつながってしまいます。
まとめ
営業倉庫に求められる施設設備基準、特に壁の強度と試験方法の一例をご紹介しました。
壁が2500N/㎡の荷重に耐えられる強度であれば、壁から荷物への距離や積み荷の高さ制限がなくなります。
安全かつ用途に適した倉庫として利用できるよう、保管する荷物に応じて壁の強度を計画することをおすすめします。