前回の記事では耐震天井の定義や特定天井との違いなどについてご紹介しました。
▼詳しくはこちら
特定天井に該当し、国土交通省告示第771号で規定された設計が困難な場合には、どのような方法があるのでしょうか。
告示771号に沿った設計が困難な場合は
特定天井への該当を避ける工法で対応
以下のような吊り天井が、特定天井として定義されています。
1. 居室、廊下その他の人が日常立ち入る場所に設けられるもの
2. 高さ6mを超える天井の部分で面積200㎡を超えるものを含むもの
3. 天井面構成部等の単位面積質量が2kgを超えるもの
コストや工期など、さまざまな条件によって国土交通省告示第771号で規定された設計が困難な場合は、特定天井の要件を避ける、つまり「特定天井に該当しない天井」として計画する方法があります。
主に以下の2つがあり、各メーカーで工法が開発されています。
● 単位面積質量が2kgを超えるもの → 2kg/㎡以下にする=軽量天井
● 吊り天井 → 吊らない天井にする=準構造耐震天井
天井1㎡あたりの重さを2kg以下に軽量化
『軽量天井』
軽量天井は単位面積質量2kg/㎡以下の設計に対応可能な天井のことです。
軽量化によって、従来の天井より落下しづらくするとともに、仮に天井板が落下しても重大な人的被害が生じる可能性が低くなります。
■ 製品例:安心天井S(桐井製作所)
安心天井Sはアルミ製の下地材で作ったフレームに、仕上げ材を嵌め込むようにして組み立てます。
仕上げ材にはグラスウールを使用することで、天井の軽量化を実現しました。
文部科学省でとりまとめられている『学校施設における天井等落下防止対策のための手引 』 では、一定規模以上の天井に対して、点検と「軽量の天井にするなど」の落下防止対策について記載されています。
これに対して、安心天井Sは 2kg/㎡以下=軽量な天井として設計できるため、体育館等の学校施設の天井設計に適しています。
▼詳細な製品情報と試験データはこちら
建物と一体化させた"吊らない天井"
準構造耐震天井
建物の構造体と天井下地材を、支持構造部を介して直接固定する工法です。
吊りボルトを使わず、建物と一体化させた天井=「準構造耐震天井」となり、特定天井の要件である「吊り天井」を回避することができます。
準構造耐震天井は吊りボルトを使わず、建物と一体化させた吊らない天井です。
地震が起きても建物と天井が一体となって動くため、天井面の振動が増幅されません。
そのため壁との間に大きな隙間を設ける必要がなく、音響効果を保持した空間が設計できます。
■ 製品例:KIRIIアングルクランプ(桐井製作所)
KIRIIアングルクランプは意匠性・音響・耐震性を兼ね備えた、音楽ホールや講堂等に最適な準構造耐震天井を実現できる工法です。
金具によるレベル調整ができるため、支持構造部の施工誤差の影響を受けにくく、勾配・段差・曲面のある複雑な天井面を高い精度で仕上げることができます。
振動台実験を実施し、性能(強度および剛性)が確認されています。
▼試験の様子はこちら【動画】
▼詳細な製品情報と試験データはこちら
特定天井への該当を避ける工法について まとめ
軽量天井と準構造耐震天井についてご紹介しました。
特定天井の要件を回避することで、設計・施工の選択肢が広がります。
現場の状況や必要とする耐震性能、コストとのバランスなど、条件に応じて最適な工法を選定しましょう。