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準構造耐震天井MOKUルーバーのご紹介とインタビュー(加賀木材㈱編)

10月公開の記事に続き、「ルーバー専用の耐震金具」×「液だれしない不燃木材」に、より安心・安全性を兼ね備えた新たな工法「準構造耐震天井MOKUルーバー」に関する情報をお送りします。

準構造耐震天井MOKUルーバーのご紹介とインタビュー(加賀木材㈱編)

先月同様、建築業界ではまだまだ新参者ライター、S・Kが担当いたします。

今回、『もえんげん®』の製造を行っている加賀木材㈱ 増江常務取締役に製品について、お話を伺ってきました。製品説明を始め、開発経緯やこだわりについてなど教えていただいたことを皆様にお伝えします。

加賀木材㈱ 常務取締役 増江弘誉矢様 

■『加賀木材株式会社』のご紹介

社   名:加賀木材株式会社(https://kagamoku.com/

本社所在地:石川県金沢市湊2丁目21番地

設   立:昭和22年12月

代 表 者:代表取締役 増江 世圭

事 業 内 容:木材販売(国産材/輸入材) / 総合建材販売 / 住宅設備機器販売

      不燃木材製造・販売 / プレカット加工材販売 / 2×4 パネル加工材販売

      集成材販売 / NOTOHIBAKARA商品製造・販売

■『もえんげん®すぎ不燃集成材(NM-1716)』 加賀木材㈱

『もえんげん ®』は加賀木材㈱の登録商標です。

・天然木を使用

・集成材を使用

・液だれしない

・白華(はっか)に強い

・軒天など半野外でも使用可能

・25色にもよるカラーバリエーション

様々な特性を持つ加賀木材㈱が開発した不燃木材。国土交通省の不燃認定品にも認定されています。

製品名となっている『もえんげん®』は、石川県の方言である「げん=だよ、のだ」を採用しており、「もえんげん=燃えないんだよ」という意味を持ちます。

ここからは、『もえんげん®』の開発経緯と合わせて、特性を2つ紹介していきます。

■開発の経緯

「木は燃える」

世の中で一般的に持たれている概念だと思います。「燃える=建築物にとって弱点の要素」となり、外国からも日本は多く木材を使用していることから、火事があった際、全焼してしまう可能性が高く、怖いというイメージがもたれているそうです。

その様なイメージを払拭したいと考えていた所、金沢工業大学で断熱材について研究を行っている露本教授との縁をきっかけに、木材の不燃化の開発を始めました。

2015年 ~山への恩返しプロジェクト~ 

「集成材を使用し、林業の手助けをしたい」

近年、林業の業界では後継者問題等の理由で就業者数の減少が深刻化しています。

・山に植えている木が使用できるようになるには50~60年といった長い時間がかかる

・その間、小まめな手入れが必要

・どんなに手入れされていたとしても立木価格の相場が安価

・木を伐採した後、新たな木を植え育てるという義務を後世に残すのが申し訳ない

一般的に不燃木材は、丸太から1~2本ほどしか取ることができない無垢材に、不燃化させるための溶液を浸透させ製造されています。

しかし加賀木材㈱では、不燃化させる素材として、いくつかの小さな木材を集めて作った集成材を敢えて採用しています。

その理由とは、「以前までは腐食がある等の理由で捨てられていた木材を購入し、劣化している箇所だけを落とし、集成材として使用することで少しでも林業の手助けをしたい」と考えているためとご説明をいただきました。

■天然木を使用している理由

加賀木材㈱では天然木を使用しています。

その理由は、元来、材木屋であることは勿論ですが、木材が持つ香りや質感など温かみを感じ、リラックス効果をもたらすことができることからだとお話していただきました。

また、木材の節のある壁は一般的な白やグレーといった壁に比べ、副交感神経の働きが高くなったり、交感神経を下げるなど、ストレスを低減させることができると、最近の研究で分かってきている様です。

このように嗅覚や視覚へのメリットにより温かみを感じるとお客様が喜んでくれる空間を提供したいという想いが天然木を使用している一番の理由だと教えていただきました。

 

■『もえんげん®』が選ばれる理由

発売当初は、材木業界では、「内装材として使用するのは無垢木材」という考えが一般的だったことから、接着剤の継ぎ目部分が見える集成材は、内装材として使用することはできないという声が上がっていたようです。

しかし、2010年に木材の利用の確保を通じ林業の持続的かつ健全な発展を図り、森林の適正な整備及び木材の自給率の向上に寄与することなどを目的とした「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、公共建築物に対し、木材の使用を促す法律が設立されました。

その後、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、森林資源の循環利用を進めることが必要と考えられ、民間建築物を含む建築物一般での木材利用の促進を図るため、2021年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に名称が変わりました。

現在は、公共建築物だけではなく木造化・木質化の推奨対象は、公共建築物だけではなく住宅や民間施設を含む「建築物一般」に変更されています。

その一方で建築基準法第35条内装制限の規定では内装で木材を使用する場合、難燃・準不燃・不燃性能が必要になります。

木材の使用を促す法律が制定されたものの木材の「燃える」という弱点が浮き彫りになりました。

そんな中、この条件を不燃木材がクリアしているということから徐々にではありますが、使用されるケースが増えてきました。

ただ、一般的な不燃木材はリン酸を使用していることが多く、屋外や湿気の多い場所で使用した場合、「液だれ」や「ひどい白華」を起こす原因に繋がることがあり、 発生してしまうと見栄えが悪いことは勿論、メンテナンスが必要になることから使用したくないというお客様の声が多く上がっていました。

液だれの様子

しかし、『もえんげん®』は不燃化させるためにリン酸を使用しないことから「液だれせず、白華しにくい」、安心して使用できる木材として注目を集め、現在に至るまで様々な場所で使用される様になりました。

■最後に

2ヶ月にわたりお送りした「MOKUルーバー」 でしたが、今回は加賀木材㈱のインタビュー記事を紹介させていただきました。

製品のことは勿論ですが、材木業界で抱えている問題やそれに対する取り組み、知らなかった木材の特性や特徴も知ることができライター自身、とても勉強になりました。

木材を使用した空間を検討されている方がいらっしゃいましたら是非、弊社までお問い合わせいただけると幸いです。

▼ 前回の記事はこちら

-準構造耐震天井MOKUルーバーのご紹介と開発者インタビュー(桐井編)-

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