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直床、二重床とは?快適な生活を支える床の構造

床の2つの構造について、メリット・デメリットや見分け方をご紹介します

2021年9月 3日
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直床、二重床とは?快適な生活を支える床の構造

普段はフローリングやカーペットに覆われて見えないため、床の構造を意識することはないかもしれません。しかし実は、日々生活する上での快適さや、将来的なフォームのしやすさを左右する重要なポイントといえるのです。

今回はマンションなどの集合住宅で採用されている「直床」と「二重床」について、それぞれの特徴や見分け方とあわせて解説します。

直床とは...スラブの上に直接床材を張る工法

「直床」は床のコンクリートスラブの上に、直接フローリングなどの仕上材を張る工法のことを指します。

床下には水道やガスなどの配管を通す必要がありますが、コンクリートスラブに直接埋め込んでしまうと、トラブルが発生した際に修理が難しくなってしまいます。

そのため直床では配管が必要な部分のみ床面を高くしたり、床スラブを下げたりして対応しますが、これにより同じ住居スペースのなかでも床に段差が生じてしまうことがあります。

また配管の位置を後から自由に変えられないため、リフォームの際にキッチンや浴室など水回りの場所を変えられないというデメリットが挙げられます。

二重床とは...床面とスラブの間に空間をつくる工法

「二重床」は床のコンクリートスラブと仕上材の間に空間のある、二重構造の床工法です。

コンクリートスラブの上に専用の支持脚を設置し、その上にフローリングなどの床材を張って仕上げます。

床下の空間に配管を通すことができるので、施工から実際に住む段階までで、次のようなメリットが挙げられます。

● 配管スペースを設ける必要がなく一体的な床スラブとなるため、

  施工精度が安定し、信頼性の高い骨組みに仕上がる

●配管工事を行うタイミングの融通が利きやすくなる

●点検口や掃除口を設けることで、設備配管類のメンテナンスが容易になる

●間取りを変更するリフォームがしやすい

●支持脚部分で高さを調整することができるため、段差のない、

 バリアフリーな空間にできる

(例)床の仕上材には以下のような種類があり、それぞれ厚みが異なります

フローリング t=12mm、塩ビシート(トイレなど) t=3mm、畳 t=30~60mm

二重床では支持脚部分で高さを調整でき、仕上材の厚みの差を簡単にそろえられるため、設計や施工時の管理が容易になるのも特徴です。

直床と二重床を比較!
メリット・デメリットにより生じる差とは

直床と二重床、それぞれのメリットとデメリットによってどのような差が生じるのかを紹介します。

直床と二重床を比較! ①価格

二重床では専用の支持脚や下地材を設置するため、部材と施工の価格が上乗せされます。

したがって直床よりも二重床の方がコストは割高になるといえます。

直床と二重床を比較! ②遮音性

物を落としたり、人が歩いたりすることで床が振動し、下の階に伝わる音のことを「床衝撃音」といい、以下の2つに分類されます。

・重量衝撃音:子どもが飛び跳ねたときの「ドスンッ」というような、鈍くて低い音

・軽量衝撃音:スプーンを落としたときの「コツッ」というような、軽くて高い音

二重床は床下に空間があるため、軽量衝撃音が伝わりにくくなります。

重量衝撃音に対しては、「太鼓現象」によって遮音性が下がってしまう場合がありますが、下地材を追加するなどの対策で解消することが可能です。

また直床の場合でも、遮音性能の高い床材を使用することで、音の伝達を抑えることができます。

したがって「直床よりも二重床の方が遮音性は高い」と一概に言うことはできず、いずれの場合でも遮音性を高めるための工夫を施すことが大切です。

▼騒音対策について詳しくはこちら

できれば避けたい騒音トラブル!音について知ろう

直床と二重床を比較! ③踏み心地

直床では遮音性を高めるため、フローリングの下にクッション材を施工することが多いです。

それによりやわらかい踏み心地になることがあるため、人によっては「見た目はフローリングなのに、歩くとフワッとする」という感覚を苦手と感じてしまうこともあります。

二重床は床下に空間を確保することと、下地材の工夫で遮音性が高められるため、クッション材を使う必要がありません。

固いフローリング材などで、しっかりとした踏み心地の床に仕上げることができます。

直床と二重床を比較! ④天井高

二重床はコンクリートスラブよりも仕上りの面が高くなるため、その分だけ天井高は低くなります。

もとから二重床で設計されている建物であれば問題ありませんが、直床から二重床にリフォームする場合には圧迫感が生じてしまう可能性があります。

直床と二重床を比較! ④リフォーム

長く住むにつれ、家族構成やライフスタイルの変化、設備の老朽化によってリフォームを検討する機会が増えてきます。

配管の位置が変えられない直床に比べ、二重床は間取りの変更など、大掛かりなリフォームにも柔軟に対応が可能です。

たとえばキッチンを対面式のカウンターに変えたい場合や、ガスやコンセントを増設したい場合でも、床下の空間で設備配管を動かし対応できます。

あらかじめ二重床構造の建物を選んでおくことで、将来的なリフォームにも備えられます。

直床と二重床の見分け方は?

見分けるポイント ①ベランダの床の高さ

一般的にベランダの床の高さがコンクリートスラブの高さになります。

ベランダの床の高さと室内の床の高さにあまり差がないような場合は、直床の可能性が高いです。

見分けるポイント ②掃き出し窓の下枠

ベランダに面する掃き出し窓の下枠が、床から10cm前後高くなっている場合は直床の可能性が高いです。

窓を施工する際に高さが必要になるため、直床の場合はその分、窓の下枠が高くなってしまうためです。

反対に掃き出し窓の下枠と室内の床面に段差がない場合は二重床である可能性が高いです。

見分けるポイント ③仕上材

マンションの場合、もとからカーペット敷きになっている部屋がある場合は直床である可能性が高いです。

また木目調のフローリングであっても、ふわっとするクッション性が感じられる場合は直床かもしれません。

まとめ 床の構造に注目してみよう

床の主な構造である「直床」と「二重床」について、それぞれの特徴や見分け方などをご紹介しました。

建物によって構造は一概にいえない場合がありますので、必要に応じて確認をしてみてください。

普段あまり意識していない部分だからこそ、少しの差が快適さを左右しかねません。

建物の新築や改修などを計画する際には、床の構造にも注目してみてはいかがでしょうか。


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