普段生活をしているなかで、上の階の足音や隣の部屋のテレビの音が気になった経験がある方は少なくないはず。
実際に国土交通省の『マンション統合調査結果』(平成30年度)によると、居住者間でのトラブルで最も多い内容は生活音となっています。
そもそも音とは何なのでしょうか?
騒音対策に有効な建材の性能もあわせて解説します。
そもそも「音」とは? 音が発生する仕組みと3つの要素
「音」の元となるのは空気や物体の振動によって発生する「波」で、これを音波といいます。
振動を起こす音源から音が発生し、気体や物体を介して音波が伝えられ、人の耳に入り鼓膜を振動させます。
その振動によって発生した信号が脳に伝わり、人は「音」を認識するという仕組みです。
音は大きさ、高さ、音色という「音の三要素」によって成り立っていて、それぞれの違いを識別することで音を認識しています。
■ 音の大きさ
耳は空気の圧力差を音として感知しています。
圧力差が大きいと音を大きく感じ、圧力差が小さいと音を小さく感じます。
音圧の国際単位はPa(パスカル)です。
しかし、人が通常聞き取れる音の大きさは最小音圧かから最大音圧まで100万倍以上の幅があります。
また、人の耳は2倍、4倍、8倍と音圧が倍増した時に等間隔で大きくなったと感じるため、音圧の対数に比例するような数値であるdB(デシベル)を用いて表します。
■ 音の高さ(音程)
音波の1秒間の振動数を周波数といい、Hz(ヘルツ)で表します。
周波数の数値が多くなれば高い音になり、数値が少ないと低い音になります。
人が認識できる周波数は約20Hz~20kHzといわれています。
ただし人の耳は、同じ大きさの音でも、低音は聞こえにくく、中高音は聞こえやすかったりと、音の高さによって聞こえ方が変わります。
そのため、騒音などの測定では、周波数ごとの大きさが人の耳の感覚に近くなるように聴感補正した数値を用います。
■ 音色
音波の質の違いによって生み出されるのが音色です。
同じ大きさ、同じ高さの音であっても、その波の形が異なることで音色の違いが区別されます。
音色は音の印象を表すもので極めて感覚的なもののため、定量的に表すことは難しいとされています。
音の中でも不快に感じる音のことを「騒音」と言います。
騒音は周りの環境や聞き手の主観によって変わりますが、音の大きさの中では以下のような数値が目安になります。
全国環境研協議会 騒音調査小委員会『「騒音の目安」作成調査結果について』より引用
伝わり方で区別される2種類の音
音波を伝えているものによって、以下の2種類に分けられます。
■ 固体音
建物の壁や床など、物体を伝わって聞こえる音。
例)上の階の足音、床に置いたスピーカーの音、トイレの排水音
■ 空気音
空気中を伝わってくる音。
例)隣の部屋の音楽や話し声、ジェット機や自動車の音
騒音対策のための「防音」「遮音」「吸音」はどう違う?
騒音の対策として「防音」「遮音」「吸音」という3つの言葉がよく使われています。
これらにはどのような違いがあるのでしょうか。
■ 防音
音が部屋の外から中や、中から外に行くのを防ぐこと
■ 遮音
空気中に伝わってくる音を遮断して、外へ音が透過しないようにする方法のこと
■ 吸音
音を吸収して反射を防ぎ、音が外に透過することを防いだり、室内の反響を抑えたりする方法のこと
つまり防音は騒音対策の総称であり、遮音と吸音は防音のための具体的な手段という位置づけになります。
騒音対策の中でも「遮音」は良く行われる手段の一つであるとされています。
遮音性能はどう表される?3つの基準について
建物の騒音対策には、壁や窓、床などの遮音性能が中心的な役割を果たします。
遮音性能の中には固体音の一つである床衝撃音と、空気音を遮断する能力を表す値がそれぞれあります。
床衝撃音についてはL値、空気音についてはD値が用いられます。
■ L値
上下階の床衝撃音を遮断する性能がL値で示され、建物そのものの遮音性能を表しています。
子供が飛び跳ねたようなドスンっという音を重量衝撃音、スプーンを落としたような音を軽量衝撃音といいます。
上階で与えた衝撃に対して、下階で聞こえる音の大きさで評価するため、数値が小さいほど、遮音性能が優れています。
■ D値
音源から出ている音と、聞いている場所での音の大きさの差から、間にある窓や壁が音を遮断する性能を表す値です。
そのため等級の数値が大きいほど、遮音性能が優れています。
■ ⊿L等級
フローリングをはじめとする床材の性能に用いられる表示方法です。
L値が建物の空間性能を表しているのに対し、⊿L等級は床材そのものの性能を表しています。
床材の無い状態での音と、床を仕上げた時との音を比較して、どれだけ音が小さくなったかを計測します。
床材の遮断する能力を表す値のため、数値が大きいほど、遮音性能に優れています。
※ 2008年以前は床材に「推定L等級」が使われていましたが、L値と混同されやすいことと、試験方法にバラツキがあったため、現在は「⊿L等級」が使用されています。
音の仕組みと騒音対策について まとめ
音が発生し伝わる仕組みや、騒音対策に関する基礎知識をご紹介しました。
音は目に見えず、生活環境や聞き取れる音の個人差によって騒音の感じ方が左右されます。
建材や物件を選ぶ際は遮音性能などを目安に、快適に過ごせる空間づくりにこだわってみてはいかがでしょうか。