平成30年、国土交通省によって『防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン』がとりまとめられました。
避難所や防災拠点となる建物には、大地震が発生しても機能継続できる性能が求められています。
本特集では、特に学校・文化・スポーツ施設の機能継続に関わるポイントを全3回に分けてご紹介します。
大地震が起きても学校、音楽ホール、体育館などの
避難所・災害対策本部としての機能を継続させる
過去に起きた地震では、建物の倒壊・崩壊は免れたものの、壁やガラス、天井などが損傷し、建物が使用できなくなり、救援・復旧に向けた本部としての機能が出来ない事態が発生しています。
大地震に見舞われても「本来果たすべき機能を継続できる」建物であることが求められています。
【要注意】
建築基準法に沿った耐震改修だけでは機能継続はできない!?
建築基準法では以下のように耐震基準を定めています。
○ 中規模の地震(震度5強程度)
(建物が)ほとんど損傷しないこと
特定天井が損傷しないこと
○ 大規模の地震 震度6強~7程度で倒壊・崩壊しないこと
建築基準法は命を守るための最低限の基準を定めた法律です。
たとえ建築基準法に沿って建物の耐震改修工事を行っていても、それは柱や梁等の構造体のみの改修かもしれません。
機能継続の基準からは対策が十分でない可能性があります。
※特定天井とは:
6m超の高さにある、面積200㎡超、質量2kg/㎡の吊り天井で、人が日常利用する場所に設置されているもの。
(国土交通省平成25年告示第771号より)
平成28年熊本地震において
機能継続が困難となった事例
■ 避難所(体育館)
天井や照明が落下し、使用不可能に
避難所に指定された体育館で天井や照明が落下し、使用不可能となった。
それでも多くの人々が殺到し、エントランスや廊下で避難生活を送ったほか、浸水や熱中症のリスクがある屋外のテントや車中での避難生活を余儀なくされた。
■ 災害対策本部(庁舎)
5つの庁舎で損傷・倒壊等が発生
初動対応に支障
主な公共施設はすでに避難所として利用されていたため、災害対策本部の移転先が決まるまでの数日間は屋外テント等で対応したケースがあった。
このような場合、救助や応急復旧などの初動対応に支障をきたす恐れがある。
■ 病院
ライフラインが途絶え、
入院患者全員を転院・退院
防災計画で中心的役割を果たすはずであった病院で、壁の亀裂や天井の損傷等の被害が発生した。
水道管から水が漏れるなどライフラインが途絶したため安全の確保が困難となり、建物倒壊の恐れもあったことから、入院患者全員を転院・退院させることとなった。
そもそも機能継続とは? まとめ
熊本地震の事例を背景に、平成30年、国土交通省によって『防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン』がとりまとめられました。
庁舎・避難所・病院などは大地震時に防災拠点として機能継続できるよう、より高いレベルの耐震性能が必要になります。
次の記事では、構造体の耐震改修のみが行われ、天井の対策が不十分である場合に起こりうるリスクについて解説します。