天井・壁・床の裏側から建物を考える

台風シーズン真っ只中! 建物にかかる風圧について知ろう

そもそも風圧力とは?基礎知識から天井の耐風圧対策までご紹介します

2020年10月12日
記事タグ
台風シーズン真っ只中! 建物にかかる風圧について知ろう

例年7月から10月にかけて日本に到来する台風シーズン。

近年では大型化により全国各地で観測史上最も強い風が吹き荒れ、屋根が吹き飛ばされるなどといった建物への被害が多発しています。

そこで今回は建物に求められる強い風への対策、「耐風圧対策」についてご紹介します。

そもそも風圧力とは?
計算方法、単位について

台風で強い風が吹くと建物が揺れたり窓ガラスが割れたりします。

このように風によって建物が受ける圧力のことを「風圧力」とよび、以下の計算式で算出されます。

風圧力 = 速度圧 (※1) × 風力係数 (※2)

※1 速度圧...風の速度と障害物の有無などによる影響を係数化した値

※2 風力係数...風が当たる建物の部位や形状などによる影響を係数化した値

風のスピードが速いほど風圧力は大きくなります。

また同じスピードでも建物の前に樹木などの障害物があると、建物に対する風圧力は小さくなります。

出典:一般財団法人消防防災科学センター(https://www.isad.or.jp/

風圧力の単位はPa(パスカル)で表します。

強風に耐えられるような建物の設計をする場合、目標とする風圧力の数値を設定する必要があります。

耐えられる風圧力(Pa)の数値が大きいほど、性能が高いことになります。

屋外だけではない?
風圧がかかる箇所の天井とは

風圧力がかかることが想定される天井は以下のような箇所が挙げられます。

■ 軒天井、ピロティ

屋外に位置する箇所の天井には風圧がかかります。

■ 駅舎

電車が通過する際の風を繰り返し受けるため、対策が必要です。

過去には新幹線の駅の天井が突然落下する事態が発生し、これは風圧力により天井の部材が疲労破壊したことが原因といわれています。

■ ガス消火設備を設置する部屋

たとえばサーバールームや美術館の収蔵庫などは、火災時に水をかけて消火してしまうと、機器や貴重品に大きなダメージを与えてしまいます。またボイラー室などでは水をかけると感電、爆発といった二次災害につながる恐れがあります。

そのためこうした部屋では水ではなくガスを用いた消火設備が設置されますが、消火時に室内にガスが充満しても、その圧力に対応できる天井であることが求められます。

風圧がかかると天井はどうなる?
天井落下の危険性

風圧がかかると、天井の仕上げ面が上下に動きます。

吊り天井の場合、天井が下から押し上げられることにより吊りボルトが座屈して、強度が低下してしまいます。

また天井の骨組み(下地材)をつなぐパーツにも繰り返し荷重がかかり、手で曲げたり引っ掛けて固定している部分が外れてしまうことで、天井面の落下につながります。

風圧による天井面落下の恐れ

吊りボルトの座屈、パーツの脱落の例

※一般的な天井の作り方とパーツの名称はこちらの動画でご覧いただけます。

耐風圧性のある天井とは?
有効な2つの対策

天井の耐風圧性を高めるには「吊りボルトの補強」と「パーツの補強」が有効です。

■ 吊りボルトの補強

吊りボルトに角パイプなどの圧縮補強材を取り付けることで、座屈を防ぎます。

■ パーツの補強

補強用のクリップやハンガーを用いることで、天井面が上下しても脱落しにくい下地材を構成します。

風圧力と天井の耐風圧対策についてまとめ

建物にかかる風圧と、天井の耐風圧対策についてご紹介しました。

風圧は立地や周辺の環境などさまざまな条件によって影響を受けるため、計画している建物に応じた緻密な計算が必要になります。

今後も地球温暖化の影響により台風が強くなる可能性が指摘されていますので、建物の耐風圧対策について検討してみてはいかがでしょうか。


桐井製作所 メールマガジン

よくあるQ&Aをもとに、
内装下地の設計・施工に役立つ情報をお届け!

注目記事

東京大学(駒場Ⅰ)数理科学研究科

大講義室(東京都目黒区)

東京大学の駒場Ⅰキャンパスの一角にある大講義室です。 約300名を収容する大講義室は学生の講義の...

【動画鋼製床 GTフロアー スタンダードタイプの施工手順(ベトナム語版ver.) / Quy trình tiêu chuẩn thi công sàn thép GT floor standard type

GTフロアースタンダードタイプの施工手順をベトナム語でご紹介します

建物の床仕上げをつくる工法の一つに、鋼製床があります。 住居に比べて大きい荷重がかかる、体育館や商業...

建物の【断熱】方法とは?ヒートブリッジ対策にもなる壁下地

建物の断熱方法について、「断熱材」を使った実験を交えて詳しくご紹介します

室内や車の断熱性を高めるために、天井・壁下地のDIYに挑戦される方も多いのではないでしょうか。施工方...

こんなクリップを待っていた!【新製品】Revolve(リボルブ)クリップのご紹介

少しでも施工手間や部材点数を減らしたい...! そんな思いにお応えすべく、新規金具「Revolveクリップ」を開発しました。 

今回は新製品Revolveクリップについてご紹介いたします。この業界ではそこそこ経験を積みましたが、...

お役立ちツール登録

閲覧・印刷・配布に便利なA4サイズ!お役立ち資料をダウンロード

桐井製作所 開発部 SNS情報

桐井製作所 開発部

身近にあるけどあまり知らない、天井・壁・床の施工・設計に関する各種法令や技術情報についてお届けしていきます。