例年7月から10月にかけて日本に到来する台風シーズン。
近年では大型化により全国各地で観測史上最も強い風が吹き荒れ、屋根が吹き飛ばされるなどといった建物への被害が多発しています。
そこで今回は建物に求められる強い風への対策、「耐風圧対策」についてご紹介します。
そもそも風圧力とは?
計算方法、単位について
台風で強い風が吹くと建物が揺れたり窓ガラスが割れたりします。
このように風によって建物が受ける圧力のことを「風圧力」とよび、以下の計算式で算出されます。
風圧力 = 速度圧 (※1) × 風力係数 (※2)
※1 速度圧...風の速度と障害物の有無などによる影響を係数化した値
※2 風力係数...風が当たる建物の部位や形状などによる影響を係数化した値
風のスピードが速いほど風圧力は大きくなります。
また同じスピードでも建物の前に樹木などの障害物があると、建物に対する風圧力は小さくなります。
出典:一般財団法人消防防災科学センター(https://www.isad.or.jp/)
風圧力の単位はPa(パスカル)で表します。
強風に耐えられるような建物の設計をする場合、目標とする風圧力の数値を設定する必要があります。
耐えられる風圧力(Pa)の数値が大きいほど、性能が高いことになります。
屋外だけではない?
風圧がかかる箇所の天井とは
風圧力がかかることが想定される天井は以下のような箇所が挙げられます。
■ 軒天井、ピロティ
屋外に位置する箇所の天井には風圧がかかります。
■ 駅舎
電車が通過する際の風を繰り返し受けるため、対策が必要です。
過去には新幹線の駅の天井が突然落下する事態が発生し、これは風圧力により天井の部材が疲労破壊したことが原因といわれています。
■ ガス消火設備を設置する部屋
たとえばサーバールームや美術館の収蔵庫などは、火災時に水をかけて消火してしまうと、機器や貴重品に大きなダメージを与えてしまいます。またボイラー室などでは水をかけると感電、爆発といった二次災害につながる恐れがあります。
そのためこうした部屋では水ではなくガスを用いた消火設備が設置されますが、消火時に室内にガスが充満しても、その圧力に対応できる天井であることが求められます。
風圧がかかると天井はどうなる?
天井落下の危険性
風圧がかかると、天井の仕上げ面が上下に動きます。
吊り天井の場合、天井が下から押し上げられることにより吊りボルトが座屈して、強度が低下してしまいます。
また天井の骨組み(下地材)をつなぐパーツにも繰り返し荷重がかかり、手で曲げたり引っ掛けて固定している部分が外れてしまうことで、天井面の落下につながります。
風圧による天井面落下の恐れ
吊りボルトの座屈、パーツの脱落の例
※一般的な天井の作り方とパーツの名称はこちらの動画でご覧いただけます。
耐風圧性のある天井とは?
有効な2つの対策
天井の耐風圧性を高めるには「吊りボルトの補強」と「パーツの補強」が有効です。
■ 吊りボルトの補強
吊りボルトに角パイプなどの圧縮補強材を取り付けることで、座屈を防ぎます。
■ パーツの補強
補強用のクリップやハンガーを用いることで、天井面が上下しても脱落しにくい下地材を構成します。
風圧力と天井の耐風圧対策についてまとめ
建物にかかる風圧と、天井の耐風圧対策についてご紹介しました。
風圧は立地や周辺の環境などさまざまな条件によって影響を受けるため、計画している建物に応じた緻密な計算が必要になります。
今後も地球温暖化の影響により台風が強くなる可能性が指摘されていますので、建物の耐風圧対策について検討してみてはいかがでしょうか。