天井・壁・床の裏側から建物を考える

家具類の転倒・落下・移動を防ぐ!振動台実験から学ぶ、住居での天井・壁・床に関する対策

E-ディフェンスで行われた振動台実験から、地震時に家具類が転倒・落下・移動することによる危険とその対策についてご紹介します

2022年10月31日
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家具類の転倒・落下・移動を防ぐ!振動台実験から学ぶ、住居での天井・壁・床に関する対策

内装空間の安全性を追求
E-ディフェンスでの振動台実験

地震が発生すると、家具類や天井・壁・床はどのように影響し合うのでしょうか。

㈱桐井製作所が参画し、『首都圏レジリエンスプロジェクト』の一環として行われた「実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」での実験の様子をご紹介します。

E-ディフェンスとは?

国立研究開発法人防災科学技術研究所が管轄する世界最大級の振動実験施設です。

観測された地震データ等をもとに、実際の建物と同じ規模の構造物を振動させてどのような状態になるかを検証します。

[実験概要]

テーマ:室内空間における機能維持

目的:様々な用途の室内環境を実際の大きさで再現し、天井・壁・床や家具・什器など、室内空間の構成要素全体の地震時の安全性を検証する

2022年1月におこなわれた実験では、「住居」「オフィス」「サーバー室」の室内空間を再現しており、住居ユニットでは、天井・壁・床を桐井製作所の標準的な工法にて構築し、リビングダイニング、書斎、子供室を想定した家具や備品を配置して地震時の状況について検証されました。

天井:耐震Power天井

壁:SQ-BAR WALL SYSTEM

床:バリアレスフロアーSD-KL

[結果]

熊本地震や阪神淡路大震災で観測された地震波の50%や75%のレベルの地震波でも家具等の破損、落下、転倒が確認されましたが、耐震対策を施した食器棚、本棚では収納物は落下しましたが、棚が転倒することはありませんでした。

RC造約30階建てや鉄骨造約10階建ての建物の最上階で感じるような地震波では、耐震対策を施した家具類も激しく転倒しました。

本棚の破壊、収納物(本・食器等)やガラスの落下・飛散だけでなく、積載した棚(約200キロ以上)が倒れ込むことの危険性が明らかになりました。

家具類の転倒 ・落下・移動を防ぐ確実な対策が重要であることがわかります。

過去に発生した地震では、人的被害の半数以上は室内における非構造部材、家具、什器の落下等が原因と報告されています。

天井・壁・床それぞれ単体での耐震性を確保することも大切ですが、家具類との相互の影響を検証し、室内空間全体の安全性を高める必要があります。

続いて、地震によって家具類の転倒・落下・移動した時の3つの危険とそれを防止するための対策についてご紹介します。

地震時に家具類が転倒・落下・移動するとどうなる?
3つの危険とその対策について

『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』から、家具類の転倒・落下・移動によって起こる3つの危険を解説します。

出典:東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』令和4年度版
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-bousaika/kaguten/handbook/all.pdf

1. ケガ

近年発生した地震によって人がケガをした原因のうち、家具類の転倒・落下・移動が約30~50%を占めています(下表)。

地震発生時、家具類の転倒・落下・移動が原因のけが人の割合

2. 火災

ストーブなどの電源スイッチを家具が転倒・落下したはずみで押してしまい、近くに置いてある衣類などの燃えやすいものに着火して火災が起こる可能性があります。

3. 退避障害

家具が転倒・移動することで避難通路や出入り口をふさぎ、つまずきや転倒をして避難の妨げになってしまいます。

家具類の転倒・落下・移動を防止するには?
天井・壁・床への固定

家具の転倒・落下・移動を防ぐには天井・壁・床へ固定する対策が考えられます。

固定方法について詳しくご紹介します。

・ 天井・壁

家具と壁をL型金具などを使用してビスで固定します。

家具の天板に桟が入っていない強度の弱いものは、家具の幅全体にあて板を渡して板の両側を木ビスで留めた後に金具を取り付けます。

L型金具などを用いてビス固定する場合

壁や柱にビス固定できない場合は、ポール式金具等を突っ張り、家具と天井との間を固定する方法があります。

天井と家具の空きが小さいと突っ張りが倒れづらくなるため、家具の上に板を敷くなどして、空きをなるべく小さくするようにしましょう。

突っ張りなどを使用して固定する場合

壁との固定にビスを使用する場合は、軽量鉄骨下地が入っている場所ではタッピングビス、入っていない場所ではボードにボードアンカーなどを使い、固定場所に適した方法を選定することが必要です。

軽量鉄骨下地の壁はコンクリート躯体に比べて壁自体の強度が弱いため、家具の種類や重量に応じてどれくらいの強度まで固定できるか製造メーカーに確認することが必要です。

下図は、金具を用いて家具と壁下地をビスで固定している状況の水平断面イメージです。

軽量鉄骨下地に固定する場合

・ 床

オフィスで多く見られる着脱可能な床パネル(OAフロア)を使用している場合、一般的に家具は固定できませんが、固定可能なものもありますので、製造メーカーに確認することが必要です。

住宅で多いフローリングなどの床で、置床(二重床)と呼ばれるものはビスによる固定が可能な場合が多いので、家具を床に直接固定できます。

フローリングやプラスチックタイルのような滑りやすい床よりもカーペットのような滑りづらい床の方が転倒しやすいですが、滑りやすい床の場合は地震の揺れによって家具類の移動が大きくなり、衝突して転倒することもあるためなるべく壁や床に固定しましょう。

まとめ
家具類を固定して地震に備えましょう

E-ディフェンスの実験結果の様子から、起こりうる被害を客観的にみることができます。

今回は、家具類の転倒・落下・移動による危険性と天井・壁・床との固定方法についてご紹介しました。

家具類への固定対策を万全にし、もしものときの安全を守れるようにしておくことが必要です。

▼ 別の振動台での天井実験はこちら

東日本大震災の揺れを再現して安全性を確認 振動台実験

▼ LGSのJIS試験について

天井・壁に求められる品質とは? LGSのJIS試験をご紹介


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