天井・壁・床の裏側から建物を考える

名建築の天井#7 GINZA KABUKIZA

伝統を継承しながら、時代に合わせて再生したランドマーク

2021年3月22日
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名建築の天井#7 GINZA KABUKIZA

もっと天井・壁・床に興味を持っていただきたい!

そんな思いから、名建築や文学作品、絵画などを内装下地材の視点からご紹介するコーナーです。

※本コーナーでご紹介する物件や作品等は、必ずしも当社および当社製品と関係のあるものではありません。

DATA

・GINZA KABUKIZA(第5期歌舞伎座)

・設計:三菱地所設計、隈研吾建築都市建築設計事務所

・竣工:2013年

・所在地:東京都中央区

『GINZA KABUKIZA』は、「歌舞伎座」と「歌舞伎座タワー」(オフィスタワー)からなる複合施設です。

歌舞伎座は明治22年の開場以降、改修工事や建て替え工事を繰り返し、現在も日本を代表する歌舞伎劇場として受け継がれています。
第4期歌舞伎座を建て替え、2013年に『GINZA KABUKIZA』が完成しました。

建物の歴史的価値を継承しながら、銀座の街並みに調和し、地域をより活性化させるための機能が付加された『GINZA KABUKIZA』の複合開発についてご紹介します。

時代の要求に応えつつ
伝統ある姿を継承

第4期歌舞伎座(先代)から『GINZA KABUKIZA』へと生まれ変わった最大のポイントは、建物全体が高層オフィスタワーと融合した複合施設となったことです。

先代は昭和25年に建てられ、火災による躯体の劣化に加え、耐震性やバリアフリー面での課題も抱えていました。
建て替え工事にあたっては、これらの要求を抜本的に解決する設計が求められていました。

一方で、歌舞伎座の伝統を継承するべく、先代の造形を踏襲した表現も多く生かされており、
瓦屋根(かわらやね)、唐破風(からはふ)、欄干(らんかん)等の特徴的な意匠を現在に引き継いでいます。

第4期歌舞伎座(先代)の造詣を生かしたGINZA KABUKIZA 外観

Copyright:flickr/tenugui (https://www.flickr.com/photos/29769039@N02/)

歌舞伎座タワーには日本建築の捻子連子格子(ねりこれんじこうし)をモチーフとしたデザインが取り入れられ、歌舞伎座の伝統と調和したオフィスタワーになっています。

最新技術との融合により
高められた安全性

劇場内の空間でも、歴史的建築に対する配慮と最新の技術が融合しています。

歌舞伎座内の天井の意匠は、先代を踏襲し、吹寄竿縁天井(ふきよせさおぶちてんじょう)が採用されました。
従来よりも音響効果を高めるため、竿縁天井の折り上げ部分には音響反射板が設置されています。

第4期歌舞伎座(先代)を踏襲した吹寄竿縁天井

Copyright:flickr/tenugui (https://www.flickr.com/photos/29769039@N02/)

現代の要求を反映し、天井にも耐震対策が施されました。

当初の計画では、歌舞伎座の天井は吊り天井で構成される予定でした。
しかし着工後に発生した東日本大震災での天井への影響を受け、ぶどう棚(支持構造部)に直接下地材を取付ける、剛天井へと計画が変更されました。

これにより、劇場内の天井は建物5階の床スラブと一体となり、地震の揺れによる影響を受けにくい頑丈な天井を構成しています。

以前の歌舞伎座の意匠を踏襲しつつ、最新の技術によって安全性が高められています。

耐震対策が施された歌舞伎座内の天井

Copyright:flickr/tenugui (https://www.flickr.com/photos/29769039@N02/)

伝統の継承にとどまらない
時代とともに進化する建物

歌舞伎という日本の伝統芸能を、永きに渡り支えてきた歌舞伎座。

歴史的建物の維持・保存にとどまらず、時代に合わせた性能を追加することで、未来へ躍進するシンボルへと生まれ変わりました。

※本コラムで紹介する物件は、必ずしも当社製品の採用例ではありません。


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