天井・壁・床の裏側から建物を考える

名建築の天井#6 名古屋城本丸御殿

歴史的建築物の天井に注目 豪華な天井に込められた当時の価値観とは?

2021年1月25日
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名建築の天井#6 名古屋城本丸御殿

もっと天井・壁・床に興味を持っていただきたい!

そんな思いから、名建築や文学作品、絵画などを内装下地材の視点からご紹介するコーナーです。

※本コーナーでご紹介する物件や作品等は、必ずしも当社および当社製品と関係のあるものではありません。

DATA

・名古屋城本丸御殿

・築城年:1615年

・所在地:愛知県名古屋市

城郭として初めて旧国宝(現 重要文化財)に指定された建築、名古屋城。
徳川家康の命により、江戸時代初期の1612年に名古屋城の天守閣が、1615年に尾張藩初代藩主・徳川義直の住宅である本丸御殿が建設されました。

名古屋の観光スポットとしても人気の名古屋城本丸御殿ですが、その天井には意外な役目がありました。

提供 名古屋城総合事務所 

華やかでバリエーションに富んだ内装空間

名古屋城本丸御殿は、総面積3100㎡、13棟の建物、30を超える部屋からなる大規模な住宅建築です。
建物の奥に進むほど部屋の造りが豪華になり、格式が上がっていくのが特徴です。

なかでも、天井の意匠には、部屋によって明確に差がつけられています。

たとえば、入口近くの表書院の天井は以下のような、木を格子に組んだ天井です。
これは「格天井」と呼ばれる、伝統的な天井様式です。

表書院一之間北東面(提供 名古屋城総合事務所)

少し奥に進んだ対面所上段之間は、折り上げ天井に黒い漆塗りを組み合わせた「黒漆二重折上げ小組格天井」です。

対面所上段之間西北面(提供 名古屋城総合事務所)

さらに奥に進んだ場所にある、本丸御殿で最も格式の高い部屋である上洛殿上段之間の天井は、格子の一つ一つに蒔絵が嵌め込まれた「黒漆二重折上げ蒔絵付格天井」です。

上洛殿上段之間(提供 名古屋城総合事務所)

奥に進むほど天井の形状が複雑になり、華やかな装飾が施されていることが一目でわかります。
面積が大きく、目に入りやすい部分の意匠に差をつけることで、内装空間の印象を大きく変化させています。

天井で表現した武家の権威

このようにさまざまな意匠を凝らした内装にする理由は、名古屋城本丸御殿が「書院造」と呼ばれる建築様式で作られた、武家の住宅であるためです。

書院造は、室町時代に成立した武家の住宅様式です。
書院造よりも前の住宅建築では、天井を張ること自体が稀でした。
しかし平安時代が終わり、武家の権力が強くなると、屋敷に人を呼んで対面での交渉をすることに重きが置かれるようになります。

対面・接客の機能を重視し、格式や儀礼を重んじて部屋ごとに異なる意匠や装飾を施すことで、権威を示すようになったのです。

上洛殿一之間北東面(提供 名古屋城総合事務所)
奥に見える上段之間は、手前の一之間よりも床が高くなっている

上洛殿は江戸幕府3代将軍徳川家光が宿泊するために造られました。
上の写真を見ると、将軍が座る上洛殿上段之間の床が一段高くなっていることがわかります。

天井を城の中で最も豪華な「黒漆二重折上げ蒔絵付格天井」にし、床に高低差をつけることによって、将軍の権威を誰にでもわかるよう視覚的に表現しています。

天井に注目することで分かる歴史的価値観

現代の建築に設置される天井にさまざまな役目があるように、歴史的な建築物の天井にも価値観や生活様式が反映されています。

名古屋城を観光する際は内装にも注目してみると、当時の人々の思いに近づけるかもしれません。

※本コラムで紹介する物件は、必ずしも当社製品の採用例ではありません。


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