天井・壁・床の裏側から建物を考える

名建築の天井#5 木材会館

木材が中にも外にも! コンクリートと木材で作り出す大規模建築

2020年12月14日
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名建築の天井#5 木材会館

もっと天井・壁・床に興味を持っていただきたい!

そんな思いから、名建築や文学作品、絵画などを内装下地材の視点からご紹介するコーナーです。

※本コーナーでご紹介する物件や作品等は、必ずしも当社および当社製品と関係のあるものではありません。

DATA

・木材会館

・設計:日建設計

・竣工:2009年

・所在地:東京都江東区

オリンピック注目エリアに発見!
ビル街から見える木材を使った建物

『木材会館』は、東京木材問屋協同組合の本部ビル兼賃貸オフィスビルです。

2009年に創立100周年の記念事業として、江東区新木場に建設されました。

特徴的な建物外観は、打ち放しのコンクリートとヒノキの角材で構成されています。
構造躯体は耐火性能の高い鉄骨鉄筋コンクリート造で形成し、外壁が炎上しても上階へ燃え広がらないように、階の途中に不燃処理をした木材がファイアーストップ材として設置されています。

Copyright:flickr/daisuke tanaakaa (https://www.flickr.com/photos/daisuketanaakaa/)

内部空間にも使われる木材

内装にも多くの木材が使われていて、モダンでありながら木の美しさと温かみに心を惹かれます。

通常オフィスビルの計画にあたっては、「内装制限」により仕上げ材に不燃材を使用することが法律で定められています。
しかし2000年に改正された建築基準法では、火災時に人間が避難できる安全性が確保されれば、制限の緩和が可能になりました。

木材会館の3階~6階の天井を見ると、空調機やダクトを木で覆い、それ以外は折り上げてあらわにすることで3.74mの天井高を確保しています。
これにより万が一火災が発生しても折り上げ天井に煙がたまり、人々が十分余裕をもって避難できるように設計されています。

この避難安全検証法により内装制限をクリアしたことで、木材会館の内装には不燃加工していないムク材が使用されているのです。

Copyright:flickr/daisuke tanaakaa (https://www.flickr.com/photos/daisuketanaakaa/)

日本が抱える森林問題

木材会館は内装・外装・最上階のホールの梁に9種類の国産木材を使用し、使用量は約1000㎥にもなります。
このように大量の木材を使用する背景には、建設場所である新木場が木材流通の中心地であるだけでなく、日本の森林事情が関係しています。

Copyright:flickr/ Ethene Lin (https://www.flickr.com/photos/ethenelin/)

日本国内の森林面積は、戦後に植林された人工林の影響で年々増加の傾向にありますが、安価な輸入木材の使用や林業の不振・後継者不足等により放置される森林が見られるようになりました。

適切な伐採が行われないと高齢の木々が多くなり、二酸化炭素の吸収量の低下や山崩れが起こりやすくなるなど、森林の持つ機能が低下してしまいます。

このような背景から、国産木材の使用を促進する動きが盛んになっています。
2010年には林野庁から「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が成立し、住宅以外の建築物に対しても木材利用が推進されています。

『木材会館』は多くの木材を効果的かつ魅力的に使用した、木材利用促進の象徴となる建物だといえます。

環境にも優しい、木材の魅力

木材は「燃えやすい」という印象が先行しがちですが、適切な設計により不燃と同等の安全性を確保することができます。

また木材は製造時のエネルギー消費量が少ないことから、省エネ材料ともいわれています。

レジ袋有料化や二酸化炭素の排出量などが注目されるなか、建物を通して環境問題について考えてみるのはいかがでしょうか。

※本コラムで紹介する物件は、必ずしも当社製品の採用例ではありません。


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