天井・壁・床の裏側から建物を考える

名建築の天井#4 宝積寺駅

地域をつなげる 美しい木天井の駅舎

2020年11月16日
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名建築の天井#4 宝積寺駅

もっと天井・壁・床に興味を持っていただきたい!

そんな思いから、名建築や文学作品、絵画などを内装下地材の視点からご紹介するコーナーです。

 

※本コーナーでご紹介する物件や作品等は、必ずしも当社および当社製品と関係のあるものではありません。

DATA

・宝積寺(ほうしゃくじ)駅

・設計:株式会社 隈研吾建築都市設計事務所

・竣工:2008年

・所在地:栃木県塩谷郡高根沢町

1899年に開業した宝積寺駅。
東北本線と烏山線の分岐駅で、宇都宮駅から那須塩原方面に向かって2駅先に位置しています。

2008年に日本を代表する建築家・隈研吾氏の設計により、現在の橋上駅舎が完成しました。
そのデザイン性の高さから、国際的な評価を得ている駅舎をご紹介します。

Copyright:flickr/ dod:(https://www.flickr.com/photos/dod-projects/

万華鏡のように広がる木の天井
明るい日差しが通り抜ける駅舎

宝積寺駅は建物のほとんどが線路をまたいで東西をつなぐ自由通路という構造になっています。
駅舎を訪れる人々を圧倒するのは、木材がふんだんに使われた幾何学模様の天井です。

鉄骨構造の建物に木材が組み合わされることで、あたたかみのある駅舎になっています。
大きなガラス窓に向かって半アーチ型を描き、太陽の光を取り込んでいます。

Copyright:flickr/ dod:(https://www.flickr.com/photos/dod-projects/

万華鏡のように広がる木材に、日差しがやわらかく反射。

神秘的でありながら居心地のよい空間が生み出されています。

地域に活気を取り戻したい
駅周辺の再生計画がスタート

2008年に改装が行われる以前、宝積寺駅周辺の商店街では高齢化や後継者不足による空き店舗の増加が目立っていました。
また駅周辺には地域住民や観光客が交流する場所がなく、商店街の活力の低下につながっていました。

駅舎そのものにも課題がありました。
当時は西側の駅舎しかなかったため、東側の住民は踏切を横断しなくてはならず、その不便さを解消するために東西連絡通路を要望する声が高まっていました。

Copyright:れとろ駅舎: (http://www.retro-station.jp/03_kanto/hoshakuji.html)

こうした地域の課題を解決するべく、隈研吾氏監修のもと宝積寺駅周辺地区の都市再生整備計画がスタートしました。

駅前広場から駅舎へと連続する幾何学模様
線路で分断された地域に回遊性を生む

駅前に広がる「ちょっ蔵広場」は特産品の販売や飲食スペースなど、地域の人々に愛される憩いの場となっています。

周囲の建物には地域材である「大谷石」が用いられています。
幾何学模様に組み上げることで、石造でありながら透明感のある広場になっています。

Copyright:flickr/takahashi hira10(https://www.flickr.com/photos/takashi_hirato/

ちょっ蔵広場から駅舎の天井へと幾何学模様を連続させることで、西口から東口へと空間のつながりが演出され、線路で分断されていた地域に回遊性が生まれたといえます。

雰囲気の変わる夜の駅舎
照明で生まれるやさしい陰影

天井の木材の合間には、規則的に蛍光灯が設置されています。

昼間は存在感の際立つ天井が、夜には照明でぼんやりと照らされ、やさしい陰影が演出されます。

昼と夜とで異なる雰囲気を味わえる点も、見どころの一つです。

Copyright:flickr/takahashi hira10(https://www.flickr.com/photos/takashi_hirato/

人々の交流の場となり、観光客を招き、地域活性化の起点となる存在に生まれ変わった宝積寺駅。
駅を旅の目的地にして、訪れてみるのも楽しそうです。

※本コラムで紹介する物件は、必ずしも当社製品の採用例ではありません。


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