もっと天井・壁・床に興味を持っていただきたい!
そんな思いから、名建築や文学作品、絵画などを内装下地材の視点からご紹介するコーナーです。
※本コーナーでご紹介する物件や作品等は、必ずしも当社および当社製品と関係のあるものではありません。
DATA
・みんなの森 ぎふメディアコスモス
・設計:株式会社 伊東豊雄建築設計事務所
・竣工:2015年2月
・所在地:岐阜県岐阜市
『みんなの森 ぎふメディアコスモス』は図書館や交流センター・展示ギャラリー・ホールなどからなる岐阜市の複合施設です。
建築家・伊東豊雄氏の設計による建物の美しさ・新しさが注目を集め、毎日多くの人々に利用されています。
なかでも図書館は従来のイメージを覆す開放的な空間で、何時間でも過ごせると話題です。
まるで自然に囲まれているような快適な空間は、天井に込められた工夫によって生み出されています。
傘のような見た目がユニーク!
光を取り込み風の流れを生む「グローブ」
図書館に足を踏み入れると、天井からいくつもぶら下がっている半透明の大きな傘のようなものが目を引きます。
これは「グローブ」と呼ばれ、昼間は上部からの自然光をやわらかく拡散させるほか、夜には照明のシェードとして、明るい空間を演出する機能をもっています。
またグローブの形状は自然な風の流れを生むのに効果的で、上部の水平窓を開けるとエネルギーを使わずに広い空間を換気することが可能です。
図書館内には計11個のグローブが吊られていて、それぞれ「親子のグローブ」、「文学のグローブ」といったように、世代や本のジャンル、読み方に合わせて空間をゆるやかに分ける役割も担っています。
グローブは見た目のユニークさのみならず、さまざまな機能を兼ね備えているのです。
Copyright:flickr/Sunoochi(https://www.flickr.com/photos/snotch/)
周辺の山並みと呼応 波打つ形状の「木製格子屋根」
『みんなの森 ぎふメディアコスモス』のもう一つの大きな特徴は、周辺の山並みに調和する、波打つような形状の木製格子屋根です。室内の天井も同様の曲面形状をしています。
グローブの上部でむくり上がったような全体の曲面形状は、特別に複雑な加工を施しているわけではなく、木材本来のしなりを活かして、形状になじむように現地で積み上げながらつくられました。
木材は岐阜の県産材である「東濃ひのき」が使われています。図書館の天井からはこのひのきの香りが発生し、施設内部をやさしい香りが包み込んでいます。
Copyright:flickr/Sunoochi(https://www.flickr.com/photos/snotch/)
自然のエネルギーを最大限に活用するコンセプト
「大きな家と小さな家」
『みんなの森 ぎふメディアコスモス』の特徴であるグローブと木製格子屋根は、「大きな家と小さな家」のコンセプトに基づいて形作られています。
「大きな家」としての木製格子屋根が全体をおおらかに包み込み、「小さな家」としてグローブ内の光や空調を快適に保つ――建物の外から「大きな家」、そして「小さな家」へとゆるやかに環境を分けることで自然とのつながりが保たれ、快適でありながら省エネルギーという空間が実現されています。
一日中癒しの環境で読書を楽しめる
『みんなの森 ぎふメディアコスモス』
特徴的な形状に目が行く屋根や天井ですが、それぞれに多様な機能をもたせるよう工夫が込められた構造であることがわかりました。
『みんなの森 ぎふメディアコスモス』に訪れた際は、天井が生みだすやさしい光や風、ひのきの香りも感じながら読書を楽しんでみてください。
※本コラムで紹介する物件は、必ずしも当社製品の採用例ではありません。