天井・壁・床の裏側から建物を考える

名建築の天井#1 国立代々木競技場

受け継がれるオリンピック建築・国立代々木競技場の天井が生み出す内部空間

2020年7月20日
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名建築の天井#1 国立代々木競技場

もっと天井・壁・床に興味を持っていただきたい!
そんな思いから、名建築や文学作品、絵画などを内装下地材の視点からご紹介するコーナーです。


※本コーナーでご紹介する物件や作品等は、必ずしも当社および当社製品と関係のあるものではありません。

DATA


・国立代々木競技場 第一体育館
・設計:丹下健三
・竣工:1964年
・所在地:東京都渋谷区



建築家・丹下健三の代表作ともいわれる名建築、国立代々木競技場。
1964年の東京オリンピックのサブ会場として建設されたこの建物は、「吊り屋根構造」と呼ばれる珍しい構造とその見た目の美しさで、世界的に注目を集めました。


一見してユニークな外観をしていますが、なぜこのような形をしているのでしょうか?

世界でも珍しい、吊り屋根構造の体育館


国立代々木競技場の第一体育館・第二体育館に使われているのが「吊り屋根構造」です。
珍しい構造で、世界的にも「吊り屋根構造」の代名詞は「代々木競技場」といっても過言ではないほどです。




第一体育館を例に簡単に仕組みを説明すると、二本の「主塔」と呼ばれる支柱の間に吊り橋のようにメインケーブルを渡し、そのメインケーブルが屋根全体を吊っているような形です。


あの独特な屋根の形状は、「見た目がカッコイイ」ためだけに考えられたものではなく、構造から作り出された機能美というわけなのです。

なぜ吊り屋根構造が採用された?その内部空間とは


実はこのように特別な構造が選ばれた理由は、内部空間の設計にあります。


「柱の一本さえ視界の妨げになり、アスリートと観客の一体感を阻害する」というのが設計者・丹下健三の考えでした。


「吊り屋根構造」であれば大きな屋根をワイヤーで吊り上げているような構造のため、柱のない大空間を構成することが可能になります。実際に、観客席とアリーナの間には柱が一本もありません。
このために世界でも採用事例が少ない構造を採用した、丹下健三の情熱と当時の施工技術の高さに脱帽です。



内部の天井にも屋根のカーブが現れており、非常に迫力があります。
竣工当時、内部の天井は吊り天井で構成されていました。屋根の鉄骨から吊り材を下ろし、天井材を支えています。


あくまでも仕上げ材を貼るために設置された天井で設備などを設置するスペースはなかったといわれており、空調は壁面から送風するという解決策が取られていました。

受け継がれるオリンピック建築



耐震性確保やバリアフリー化のため2017年~2019年に国立代々木競技場の改修工事が実施されました。
内部の天井は特定天井に該当するため、天井も合わせて改修されています。


特徴的な天井の形状を変えないように様々な安全性の検証を行い、「吊らない天井」への改修が行われました。


時代とともに法令や安全基準が変わり続ける中、歴史的な名建築を更に後世に受け継ぐため、現代の技術を駆使して改修は完了しました。



竣工から50年以上が経過した今なお、芸術性の高い外観を維持しつつ、現代の景観に違和感なく馴染んでいます。
これから先もその時代の技術者の情熱をもって、さまざまな法令に応じた改修を続けながら、長く使われていくことでしょう。

※本コラムで紹介する物件は、必ずしも当社製品の採用例ではありません。


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