建築設計基準改定のポイントを解説 -天井編-
平成28年4月の熊本地震では、防災拠点となる庁舎が使用不能となる事態が発生しました。
これを教訓とし、令和元年に国土交通省が国の庁舎を対象とする建築設計基準の改定を行いました。すでに同年7月からの設計業務に適用が開始されています。
大地震に見舞われても、地域を守る司令塔として機能し続けるために。
本特集では、庁舎の天井の耐震設計に関する規定とその対応策について全3回にわたってご紹介します。
※建築設計基準とは:
国の庁舎の建築設計を行うにあたり、基本的性能の水準を満たすための標準的な手法やその他の技術的事項を定めた基準です。地方自治体の庁舎設計についてはこれを準用することが通例です。
必要な性能と耐震性を兼ね備えた天井を選定
庁舎にはさまざまな種類の天井があります。
耐震性のみならず、その箇所に適した性能を兼ね備えた工法で設計することが重要です。
機能継続できる庁舎に向けた改修のヒントとなる選定方法をご紹介します。
■ 通行量が多く、風圧がかかる場所の天井
例:軒先、ピロティ
対策: 耐震性と耐風圧性を兼ね備えた工法が最適
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推奨工法: 耐風圧天井TOBAN(耐震・防振タイプ)
防振性能と耐震、耐風圧性能という相反する3 つの性能を兼ね備えた工法です。
■ 特定天井に該当する、高くて広い天井
例:エントランスホール、議場
対策: 告示771 号で規定された方法での設計が必要
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推奨工法: KIRII アングルクランプ
建物の支持構造部と天井を一体化させ、「吊らない天井」を構成することで、特定天井の対策が可能な工法です。
※特定天井とは:
6m 超の高さにある、面積200 ㎡超、質量2kg/ ㎡超の吊り天井で、人が日常利用する場所に設置されているもの。
■ 特定室、機能停止が許されない室の天井
例:知事室、サーバールーム
対策: 天井を構成する部材を緊結接合させる仕様で設計
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推奨工法: 緊結在来天井
衝撃試験で性能を確認したクリップを使用して接合部を緊結させる、建築設計基準対応工法です。
■ レイアウト変更の可能性がある部屋の天井
例:執務室、窓口
対策: 耐震性とメンテナンス性を兼ね備えた工法が最適
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推奨工法: 耐震Power e グリッド
パーテーションや照明・空調の配置が変更可能で、部屋のレイアウト変更に柔軟に対応できる工法です。
※国土交通省告示第771号非対応
■ 照明や空調等の天井裏設備が多い廊下の天井
例:廊下、トイレ
対策: 狭い天井裏でも施工可能な耐震天井工法が最適
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吊り材を使用しないため、天井裏が狭い箇所でも施工が可能です。性能確認試験にて耐震性を確認済みです。
※国土交通省告示第771号非対応
まとめ
庁舎の設計に用いられる建築設計基準改定のポイントと、その対応策についてご紹介しました。
より詳しい情報や天井の耐震対策に関するご質問等は、こちらからお気軽にお問合せください。